経団連は7月9日、カジノシークレット 入金ボーナスオンラインで開催した。弁護士法人髙井・岡芹法律事務所の岡芹健夫代表社員弁護士が、「滋賀県社会福祉協議会事件・最高裁判決」を解説した。概要は次のとおり。
■ 事件の概要
本件は、福祉用具センターで主任技師として勤務してきた労働者(上告人)が、技術職から総務課施設管理担当への配置転換を命じられたとして、配置転換法理に照らした労働契約違反による債務不履行または不法行為に基づく損害賠償等を求めた事案である。
■ 判決のポイント
(1)職種限定合意の有無
一部の資格職等を除いて、職務区分が明確な事案であっても職種限定合意が否定された裁判例は少なくなかった。本件判決は、労働者の属性や雇用時の経緯、雇用後の勤務実態等を総合的に考慮して、黙示の職種限定合意を認めた点が特徴的である。
具体的には、労働者が(1)技術系の資格を多く有していたこと(属性)(2)特に溶接技術を見込まれて機械技術者の募集に応じて採用されたこと(経緯)(3)技術者として18年間勤務し、溶接ができる唯一の技術者であったこと(勤務実態)(4)使用者(被上告人)は県が定める指定管理者であり、業務の外部委託化は想定されないこと――などが合意認定の根拠となった。
(2)職種限定合意がある場合の配置転換
最高裁は、職種限定合意がある場合、労働者の個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命じる権限を使用者は有しないと指摘。権限を有していたことを前提として濫用に当たらないとした原審の大阪高裁の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原審判決を破棄・差し戻した。
原審は、黙示の職種限定合意の存在を認めつつ、配置転換を要する事情として、(1)福祉用具の改造、製作事業の業績悪化に伴って当該事業は廃止することを前提としていたとみ得ること(配置転換命令の2年後に廃止)(2)将来的な技術職の整理解雇を回避するためには配置転換に業務上の必要性があること――などを挙げていたが、最高裁はこうした整理解雇的な事情には特段言及しなかった。
■ 実務上の留意点
裁判例は事案に即して理解することが重要である。本件について、例えば業績悪化等の状況を踏まえて、配置転換の可能性を個別に打診すべきであったのか、事業廃止の時期がもっと早ければ裁判の結論が変わっていたのか、整理解雇までいかずとも労働条件の変更解約告知であったらどうなっていたか――など、判例の評価は定まっていない部分がある。
一般に、職種限定合意の有無によって、配置転換の可否、整理解雇時の解雇回避努力における考慮の程度等、人事上執るべき措置は変わってくる。労働基準法の改正労働条件明示ルールが2024年に施行されたように、企業は、配置転換に関する合意の証跡を、労働条件通知書や労使のやり取りのなかで明らかにすることが肝要になるであろう。
【労働法制本部】