カ ジ ノ シ ー ク レ ッ トは7月25日、東京・大手町のカ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト会館で観光委員会企画部会（今泉典彦部会長）を開催した。観光業の雇用改革に向けた課題等について、日本総合研究所調査部の藤山光雄関西経済研究センター所長から説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ カ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト雇用の現状

観光庁によると、2024年上期における訪日外国人旅行者数は1778万人に達し、通年では3500万人、消費額も23年の5.3兆円を上回る8兆円が視野に入るとされている。

一方で、観光業においても、人手不足の問題は深刻である。離職したカ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト雇用者の行方をみると、コロナ禍での一時的な落ち込みから回復傾向にあるものの、宿泊業・飲食サービス業への復帰は4割未満にとどまっている。観光業で働く際の魅力の向上が喫緊の課題となっている。

■ カ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト雇用が抱える課題

カ ジ ノ シ ー ク レ ッ トでの雇用には二つの課題がある。

第一に、賃金の低さと労働環境の厳しさである。全産業と比べると、カ ジ ノ シ ー ク レ ッ トでは、一般労働者の年間賃金で約130万円、短時間労働者の1時間当たりの給与で270円ほど低い。また、年間の休日は11日、有給休暇取得日数は4日少ない。カ ジ ノ シ ー ク レ ッ トで働く若年正社員の間では、賃金や労働時間等の条件が良い会社に移りたいという声が全産業に比べて多くなっており、その結果として転職が増えていることが分かる。

第二は、いわゆる非正規雇用等の割合が高いという点である。観光需要は季節性や曜日差が大きいため、飲食サービス業では8割、宿泊業では6割弱を占めている。必要に応じて非正規雇用等を活用しつつも、人手不足が深刻化するなかでは、長く安定的に働いてくれる人材の確保がますます重要となってくる。

■ 求められる取り組み

こうしたカ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト雇用状況を踏まえ、今後は二つの取り組みが求められる。

まずは、賃上げに向けた労働生産性の向上である。カ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト労働生産性をみると、宿泊業では全産業平均の4割、飲食サービス業では6割にとどまっている。そこで働き方を見直し、単純業務のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション（DX）の推進はもとより、観光業特有の「中抜け」勤務の見直し等による従業員のマルチタスク化などを行い、人は「ヒト」にしかできない業務に注力することが重要である。

次に、「雇用の安定」に向けて、採用と人材育成の強化が求められる。求職者から選んでもらえる産業となるために、習得できる能力等を示すことが重要である。あわせて、カ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト魅力や発展の可能性をアピールすることで、他産業にない利点や優位性を示していけるのではないか。この点では国や自治体の支援も求めたい。ハード面の受け入れ環境の整備やプロモーションだけでなく、実務人材の確保や定着など、人材面での支援を複数年にわたって継続してほしい。

観光は地域における成長産業である。各自治体はカ ジ ノ シ ー ク レ ッ トを成長戦略の柱として明確に位置付け、継続的に支援すべきである。

【産業政策本部】