経団連のイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会は5月16日、会合を開催した。心陽の石田陽子代表取締役から、カジノシークレット キャッシュバック率について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
医療と公衆衛生は全く別物である。医療は、医師など資格を有する者が、医療機関という限定された場所で、患者個人を対象とする。一方、公衆衛生は、資格や場所を問わない。ある集団内の人間の健康を増進し、疾病のリスクを低減もしくは予防し、生活を支援する。公衆衛生の施策は地味で、高度急性期医療のような派手さはない。しかし、集団を対象とし、施策の影響を受ける人数を増やすことで、大きな結果を出すことができる。
例えば、英国では、国民の主食であるパンの製造業者の協力により、パンに含まれる塩分を減らすことで、国民全体の平均血圧を8年間かけて2mmHg下げた。その結果、高血圧によって引き起こされる心筋梗塞や脳卒中の死亡者数は4割減った。医療費にすると年間2300億円程度の削減につながった。
公衆衛生においては、心理社会的集団免疫の力を使うことが重要である。例えば、個々人のコミュニケーションレベルに関係なく、コミュニケーションの豊富な村落の住民は、そうでない村落の住民より健康である。あるいは、個々人のいじめの有無にかかわらず、いじめの少ない企業の従業員は、そうでない企業の従業員より健康である。結束力が強く、格差の少ない社会が、その集団の健康を育む。
企業には、医療ではなく、公衆衛生の視点にたったヘルスケアDXビジネスを勧める。ヘルスケアビジネスは、医療と違って、資格や場所など、制度上の制限なく、個人と集団のどちらも自然にサービスの対象にできるからである。各企業の事業の強みを活かした方法でヘルスケアDXを起こしてほしい。対象とする集団は、同じ企業の従業員とするなど、職域での心理社会的集団免疫の獲得を目指すことが有用である。対象疾患は、職場での効果判定が容易な高血圧症を推奨する。企業内食堂での減塩キャンペーンや、運動・禁煙などのポピュレーションアプローチ(注1)を組み合わせることで、有所見者数を対象にしたハイリスクストラテジーのみの場合と比べて、より大きな効果が期待できる。また、スリープテック(注2)による生産性向上も有望である。日本の労働者の半数以上が睡眠に対して課題を感じている。従業員の睡眠衛生増進は、最も価値のある人的資本投資である。
オンライン診療のさらなる普及のためには、利用実績を重ねながら、国民の健康増進に資することを証明し、その社会的意義を高める必要がある。罹患人口と介入インパクトの大きい生活習慣病から始めることが賢明である。
(注1)リスクの大小にかかわらず集団全体に働きかけ、集団全体として病気の予防やリスクの軽減ができるようにすること
(注2)IT・AI技術を活用して睡眠をモニター・分析・改善するための製品やサービス
【産業技術本部】