私は「ものづくり」の業界に身をおいている。変化への対応が「まだまだこれから」の企業が多いといわれる業界だが、私の周りでも様々な変革あるいは新しい事業化への取り組みが進められている。そうした中、取り組みの成果の確からしさを向上させるには、「現場・現物・現実」の「三現主義」のマインドセットが有効と考えている。
まずは、足を運ぶ対象となる「現場」の定義を大きく変えることがキーとなる。イノベーションの源と期待されるスタートアップの方々や世代・文化の異なる方々との話し合いから、「現場」での気付きのステップアップを期待したい。スピーディーさが求められる仮説検証の繰り返しの場面でも、「現場・現物・現実」の対象を自分に都合よく限定せずに、「素直に」見て、感じて、素早く反応することを大切にしたい。「素直さ」から気付きの自由度が向上することが期待でき、その先で何が起こるかを考え、リスクも覚悟のうえで果敢な行動につなげることも可能になる。
厄介ではあるが、求められる変革の実現には、社会・環境・科学イノベーションを俯瞰しながら、長・中・短期の達成目標を見据えた複層的な構想が求められる。カーボンニュートラル実現の取り組みを例に挙げれば、長・中・短期で地域特性にも配慮した社会をどう描き、それぞれ新たなイノベーションをどう起こすか。また、思いのほか複雑な現実を直視しながら、どう単純化して具体的テーマに絞り込む決心をするか。ロードマップは、失敗の連続と継続的な見直しとのルーティンであり、さらには目標の高さ故に大胆に見直す覚悟が必須となろう。絶対の正解が存在しない社会課題の解決に向けて、「三現主義」は常に問いかける。日々変化する社会を「素直に見て、感じることは何か」、そして「そこで、何を考えるべきか」。素直に反応して、磨きをかければよい。「素直さ」を大切にしたい。