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2024年10月8
一般社団法人 日本経済団体連合会

【北海道経済】

〔北海道経済の現状と見通しについて問われ、〕短期的にはエネルギー価格の上昇などといった下押し圧力もあるが、基調的な円安がインバウンド拡大による消費活性化につながっていく面もある。中長期的に見れば、特に北海道は大きなポテンシャルを有しており、期待している。例えば、再生可能エネルギーの活用促進や、広大な農地を強みとする農業分野での生産性向上により、北海道はわが国のエネルギー安全保障や食料安全保障に大きく貢献できよう。アドベンチャーツーリズムを中心とした観光業のさらなる発展も期待できる。また、グリーントランスフォーメーション(GX)等の成長分野への十分な資金供給がなされる環境を実現する「GX金融・資産運用特区」に選定された(6月)ことも追い風となる。加えて、半導体産業における国家プロジェクトであるラピダス社の操業に向けた準備も進んでいる。2025年からのパイロットライン稼働、2027年からの量産製造開始に向け、研究開発と需要開拓を同時並行で進められており、大いに楽しみにしている。

〔ラピダス社の量産開始に向けて官民で5兆円規模の投資が必要とされる中、投資を検討する企業にとっての予見可能性の向上に必要な施策や政府への期待を問われ、〕半導体は経済安全保障上の重要な戦略物資であり、自国ないし同じ価値観を有する国の中で半導体のサプライチェーンを持つことは重要である。その意味で、ラピダス社の挑戦は非常に意義深い。

最先端半導体の量産に向けた技術開発のハードルは極めて高く、チャレンジングなプロジェクトであるが、同社は米国の研究所への100名規模の技術者派遣や、米シリコンバレーでの需要開拓に向けたマーケティング拠点の設立など、戦略的に取り組んでいる。こうした取り組みにより、2025年のパイロットライン稼働に向けて、徐々に予見可能性は高まり、企業も投資判断が可能になってくるのではないか。

政府には、北海道がラピダス社を中心とした半導体産業の集積地となるような、中長期的な支援を期待したい。

〔連合北海道が、ラピダス社の工場建設工事の工期延長を含めた労働安全衛生の対策を道に要請したことについて問われ、〕労働者が安全に働ける環境整備は不可欠である。そのことを前提としつつ、他方で、半導体の技術開発、量産化の競争に勝つためにはスピードも重要であり、ラピダス社には二兎を追って努力してほしい。

【石破政権】

〔新政権への期待を問われ、〕石破総理は、自民党幹事長や閣僚を歴任されている政策通であり、大いに期待している。

30年ぶりの賃金引上げを2年続けて実現し、また国内投資も30年ぶりに100兆円を超える見込みである、そしてGDPも年間では600兆円を超えるなど、日本経済はまさにデフレからの脱却に近づいているといえよう。石破総理は、特に経済政策について、岸田政権の政策を踏襲する方針であり、上向きのモメンタムを維持・強化する方向での取り組みを力強く表明されたことは心強い。

また、エネルギー政策についても、再生可能エネルギーだけでなく、原子力発電の活用促進、さらには核融合発電の実用化に向けた取り組みの必要性にも言及されており、ありがたい。

経団連は、2023年を「起点」の年、2024年を「加速」の年として賃金引上げに取り組んでおり、2025年はこの流れを「定着」させることで、デフレからの完全脱却、ひいては成長と分配の好循環を実現したい。

〔衆議院解散総選挙の争点を問われ、〕企業の関心事は、経済、物価であろう。まさに岸田政権で進められてきた成長と分配の好循環の実現に向けてどのような政策を打ち出すのかが争点となるだろう。加えて、政治資金の問題も争点になる。政策本位の選挙戦を大いに期待したい。

〔選択的夫婦別姓制度について問われ、〕同制度については、「万機公論に決すべし」であり、新政権においてはぜひ国民に見える形で議論してほしい。

【賃金引上げ】

〔厚生労働省の8月の毎月勤労統計調査において、実質賃金が3カ月ぶりにマイナスとなったことを踏まえ、来年度の賃金引上げに向けた考え方を問われ、〕政府・日銀は2%程度の適度な物価上昇を実現しつつあり、そうした中で、企業が生産性を向上させることで、構造的な賃金引上げを実現していきたい。極端な物価上昇を企業の賃金引上げだけでカバーし続けることは困難であり、政府・日銀の政策と合わせて取り組んでいくことが重要である。

実質賃金が3カ月ぶりにマイナスとなったが、中長期の傾向として物価上昇率が2%程度に落ち着いてくるとみられることに鑑みれば、現状の実質賃金に一喜一憂すべきではない。なお、毎月勤労統計調査で実質賃金の算出に用いられている消費者物価指数は「持家の帰属家賃を除く総合」であり、日銀や政府の物価見通し等で用いられる指数(「総合」、「生鮮食品を除く総合」)より高いことに留意が必要であり、その意味でも現在の実質賃金の水準を見て悲観的になってはいない。物価に負けない賃金引上げが持続する経済環境へと確実に近づいている。

以上

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