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2022年12月5
一般社団法人 日本経済団体連合会

【岸田内閣への期待】

どの国のいかなる政権も、物価上昇の局面にあっては支持率低下に悩むものであり、岸田内閣も例外ではない。岸田総理は、グリーントランスフォーメーション(GX)やスタートアップ振興策、人への投資など多くの政策課題に一つひとつ真剣かつ真摯に取り組んでおられ、着実に実を結んでいる。各国首脳とのトップ会談などで外交面での成果も挙がっている。

厳しい内外情勢下にあって、日本の政治が停滞することがあってはならず、安定的な政権運営による政策の継続が望まれる。

【為替】

本来、為替は経済のファンダメンタルズを反映するものであり、安定的に推移することが重要である。昨今の為替の変動は、日本と欧米の金利差拡大を背景にした投機マネーの動きが多分に影響している。米国はインフレを抑制するためにあらゆる手立てを講じる基本スタンスを変えてはいないが、物価上昇が沈静化する兆しも見られ、来年には金利の引き上げが落ち着くという観測も出始めている。そうすれば、おのずと為替も安定していくのではないか。マーケットの動向を引き続き注視していく。

【防衛費増の財源】

昨今の地政学的リスクを考慮すれば、防衛力を抜本的に強化すべく防衛費を増額するという政府・与党の方針は正しい。そのために、まずは財政支出の効率化や歳出削減をしっかりと行い、その上で、どういったタイミングと負担で、どの財源を充てるのかを慎重に議論していただきたい。

【原子力政策】

〔「原子力政策の基本原則と政策の方向性・アクションプラン(案)」(11月28日)について問われ、〕日本の地政学的リスクやエネルギー安全保障の確保、2050年カーボンニュートラルの実現といった諸状況を総合的に踏まえ、取りまとめに向けた検討が行われているものと承知している。原子力規制委員会の安全規制の遵守を前提に原発の運転期間の延長を認めるとともに、次世代革新炉の開発・建設、バックエンドへの対応など、GXに向け、安全性・コスト両面において必要な施策が網羅されており、良い方向であると評価している。

【春季労使交渉】

〔連合の春季生活闘争方針(12月1日)とJAMの春季労使交渉方針案(12月5日報道)の受け止めを問われ、〕連合が今年の春季労使交渉を前に4%程度の賃金引き上げ要求を掲げていたことを踏まえると、物価上昇分も加味して5%程度に要求水準を引き上げること自体に驚きはない。物価上昇に負けない賃金引き上げは経営側の責務である。現下の物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が実現するよう、2023年版の経営労働政策特別委員会報告を通じて、会員企業に賃金引上げを呼びかけていきたい。働き手の約7割を雇用する中小企業にまで賃金引き上げのモメンタムが広がっていく必要がある。適切な価格転嫁が日本のサプライチェーン全体で起きることが理想であり、パートナーシップ構築宣言の浸透に経団連は引き続き注力していく。

【労働移動の円滑化】

GX、デジタルトランスフォーメーション(DX)を梃子に、日本全体の生産性を上げることが現下の重要課題である。産業構造の変革に応じて事業のポートフォリオの組み替えが進むことから、企業内での労働移動に加えて、成長産業・分野等への円滑な労働移動も不可欠となる。労働移動の円滑化には、労働需要の変化に対応して、働き手、企業、政府のそれぞれが取り組みを進めることが肝要である。働き手には、主体的な能力開発を通じてエンプロイアビリティを高めることが求められる。企業はリスキリングを実施するなど、そうした働き手の取り組みを支援しなければならない。政府は、働き手へのリスキリングの機会提供を強化し、雇用のセーフティーネットと組み合わせる政策も検討すべきである。

【中国のゼロコロナ政策】

他国の内政について、その良し悪しをコメントするのは控えたい。

中国は世界のサプライチェーンに組み込まれており、ゼロコロナ政策に伴う各種の行動制限が世界経済に与える影響は大きい。先の日中首脳会談において、岸田総理がゼロコロナ政策の緩和に言及された背景には、こうしたことがあるのではないか。いずれにせよ、新型コロナ対策と経済社会活動の両立が進むことを期待したい。

以上

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