一般社団法人 日本経済団体連合会
【ロシアのウクライナ侵略】
G7諸国の間では、ロシアに対するエネルギー依存度を低下させていくことが共通認識になっている。今般日本が決めた石油禁輸措置はG7メンバーとして共同歩調を取るものだ。LNG(液化天然ガス)については、代替の調達先の確保が難しいため、G7各国の対応にばらつきが生じている。エネルギー自給率やエネルギー安全保障の観点からすると、サハリンプロジェクトの権益維持は非常に大事であり軽々に扱うべきではない。日本が権益を放棄しても、それを得る国が現れるようでは、ロシアを制裁することにはならない。ただし、制裁と対話の両方が必要である。対話から排除することは、長い目で見れば、問題の解決につながらないのではないか。
〔石油禁輸措置の日本経済への影響について問われ、〕OPECプラスが大幅増産に応じないという現下の状況を踏まえると、短期的には影響はあるだろう。円安も相まって日本経済にはダブルパンチである。もっとも、石油禁輸の時期は実態をみながら検討していくということであるし、LNGの即禁輸がもたらすほどのシリアスな影響は及ぼさないだろう。
今般のロシアによるウクライナ侵略で国民は、国の安全保障、エネルギー安全保障、食料安全保障の重要性を強く認識するようになった。エネルギーと食料双方の自給率を高める検討を加速すべきである。
【円安の進行】
日米間の金利差を背景に円安は進行しているが、現在欧米ほどのインフレではない。そもそも、為替対策に金融政策を用いるべきではなく、日銀が定めるインフレ目標の実現に向けて、金融政策を運営すべきである。
他方、為替は経済のファンダメンタルズを反映するものであるから、日本経済をいかに立て直すか真剣に考える必要がある。短期的な為替の変動に右往左往せず、むしろ中長期的な為替の安定に向け、グリーントランスフォーメーションを中心とする成長戦略の実行で日本経済を力強いものとすることが不可欠である。
【水際措置の緩和】
〔日本政府が6月以降、外国人観光客を受け入れる方向で検討していることについて問われ、〕事実であれば歓迎したいし、なるべく早く緩和してほしい。この大型連休中、多くの日本人が観光・レジャー目的で海外に渡航した。他方、日本は今なお外国人の観光目的の入国を認めていない。相互主義が世界の常識であり、現実的な検討を行っていただきたい。また、円安は、訪日客にとってはチャンスである。大阪・関西万博を控える中、海外の方々を日本ファンとして引きつけておくためにも、スピーディーに国を開いていただきたい。
【製造業の品質不正問題】
ものづくりにとって品質保証、品質管理、検査は基本中の基本である。ここに不正があれば、消費者、社会の信頼と安心を得ることができず、日本の製造業の強みが失われる。昨今、内部通報制度が普及してきている。これにより、品質不正の事例があぶりだされ、しっかりとした企業風土、体制、仕組みが各社内で築かれればよい。
企業は高い倫理観を持って社会的責任を全うしなければならない。経営者はこのことを肝に銘じて、しっかりとした内部統制の構築に取り組む必要がある。経団連は「企業行動憲章」により、実効ある不正防止策の実施を会員企業に促している。この取り組みは、当然継続していく。
【企業の採用と人権・ダイバーシティ】
〔採用説明会への参加を希望する大学生に対し、吉野家HDが本人に確認せず外国籍と判断して拒絶したことへの所感を問われ、〕一般論として、経団連の「企業行動憲章」に明記しているように、人権やダイバーシティは世界の常識であり、ご指摘のようなことがあるのであれば、残念だ。就労ビザが取れなければ、就職はさせられないが、面接の際に、そういったことをきちんと説明すればよいのではないか。企業には、社会性・倫理観が求められていることを十分認識してほしい。