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2018年10月24日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【春季労使交渉】

「官製春闘」という言葉はナンセンスである。政府は、経済情勢や景気への配慮はもちろん、日本の給与水準が国際的に見ても低く、もう少し上げるべきだとの考えを示している。経済界も概ね同様の考え方を持って自ら取り組んできている。これを、「官製春闘」と言うのはおかしい。また、政府からの賃上げ要請を経団連が支持するのかと言われるが、これもどうだろうか。マクロレベルでどれくらいの賃上げ水準が必要かを示す必要があるというのなら、議論したいと思う。

経団連では現在、年明けに公表する「経営労働政策特別委員会報告」の策定に向けた検討を行っているところである。賃金だけでなく、働き方改革も議論の対象である。働き方改革は、長時間労働の是正や正規雇用・非正規雇用の問題だけではない。働き方そのものが大きく変わる中、従来型の処遇体系で良いのかということを経営者は常に考えている。こうした点について、春季労使交渉で労使が議論することは大変有意義である。

かつて賃上げは業界横並びであったが、各業界はすでにそうではなくなっている。連合もベアの水準だけでなく、様々な観点から賃金等の要求を検討していると思う。意欲ある社員が報われるような処遇のあり方を経営側が検討する中、連合もそれに対応する意見を要望してくるのでは、と好意的に受け止めている。

【外国人材の受入れ】

外国人材を受け入れるための新たな在留資格の創設を政府が打ち出した。経団連の意見がかなり反映されるかたちで制度設計が進んでおり、評価している。現実として多くの外国人が日本で働いていることをどう受け止めるのか。政府だけでなく、地方自治体、企業にもそのことが問われていると思う。わが国にとって良い制度にすることができるかどうかは、この点をしっかり議論できるかどうかにかかっている。

受け入れ対象分野の検討にあたっては、まずは活躍の場があるかどうかが重要となる。また、人手不足の業界は外国人材の受け入れを要望している。まずはそうした分野から万全の受け入れ態勢を整えていくべきだと思う。受け入れ対象分野を一律に議論することは難しく、業種ごとに受け入れに向けた課題の解決を議論していくことも今回の法改正の趣旨だと理解している。

政府は来春の制度導入を目指しており、半年かけて議論する。拙速だとは思わない。まずは仮説をたてて制度を作り、試行してみて改善していく。それくらいのスピード感で取り組まないと物事は変わらない。

他方、産業競争力を高めるという観点からは、国際的な人材獲得競争を勝ち抜き、高度人材を獲得できるかが鍵となる。高度人材、単純労働者のどちらということではなく、どのような受け入れについても、まずは働く人の立場に立って、日本が外国人にとって働きやすい国となるように環境整備をしていくことが重要である。

【消費増税】

まずは消費税率を10%へと引き上げることが最優先課題である。日本社会は5%から8%に引き上げたときの景気の落ち込みがトラウマとなっている。同じような事態を招かないよう、経済対策を実施することに反対ではない。他方、消費増税は財政健全化に資するものでなければならない。個別の対策がどこまで効果があるのかを検証することには難しい面もある。キャッシュレス決済の活用やプレミアム商品券の発行など、多くの対策を混在させると、実施側の負担も出てくるかもしれない。来年の消費増税実施まで、政府・与党で重点的に議論される。経団連も全面的に協力していく。

なお、キャッシュレス化の推進は元々、消費税とは別次元の課題である。世界各国と比べて、日本がかなり遅れている分野であり、金融機関も危機感を抱いている。クレジットカードにさえ対応できていない中小事業者が多いことがキャッシュレス化を進めるうえでのボトルネックとなっている。予算をあまりかけずに実施できる消費税対策であり、今のタイミングでどのように推進していくのか、検討を深めていくことが重要である。

【日米財界人会議】

経済界が貿易交渉にあたるわけではないが、民間同士の対話は非常に重要である。通商問題にしても、社会格差や産業構造など当該国の経済社会の構造が反映されている。来週の日米財界人会議では、そうした経済社会の有り様、方向性を含めて議論することができれば有意義である。

【日中関係】

中国は「新常態」を打ち出し、拡大成長路線から質の高い経済成長へと舵を切った。こうした中国政府の政策運営もあって、中国経済は新たな発展段階に入り、新しいマーケットが拓かれるという期待がある。これを見据え、日本の経済界は中国の経済界と議論してきた。中国では今、世界の工場といった大量生産型の成長モデルではなく、新しい付加価値を生む産業の育成が重要となっており、これが実現すれば日本にとっても意味がある。比較優位な産業分野とそうでない分野が中国にもあるので、相互補完的な、ウイン・ウインの日中関係を築いていきたい。

米中間の貿易摩擦といった不確実な要素はあるが、将来を見通した経済協力について話し合うことは日中双方にとって有益である。日本から中国へのODA供与が終了した。これは自然な流れであり、これからは第三国での経済協力の案件が増えていくのではないか。

地政学的な変化が急速に進む中、さらなる日中関係の強化に向けて、政府、経済界がそれぞれの役割を果たしていくことが重要である。

以上

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