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2018年7月20日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【夏季フォーラム】

今年の夏季フォーラムでは、2日間の議論の取りまとめとして、経団連行動宣言を策定した。対外的なアピールのみならず、内向き、即ち、会員企業に向けたメッセージという点でも非常に重要なものである。時代がめざましく変化する中で、経団連としてこの変化をどう受け止め、どう行動していくかという大きな方向性を示す趣旨で取りまとめた。なお、今回、分科会の議論を非公開とした。公表前の各社の事例が紹介されるなど、少人数で踏み込んだ議論をすることができた。

【Society 5.0】

日本がIoT、ビッグデータの分野で後れを取っていることはなく、変化をいかに先取りしていくかという勝負である。中国はじめ諸外国とも競い合いながら、意欲的に取り組んでおり、Society 5.0のコンセプトについても、政府が昨年、方針を定めた。日本にはこれまでの産業の蓄積もあり、今後、大きなチャンスがある。

【経団連の行動指針】

会社経営には長期的な視点が不可欠であり、企業・経済界の代表である経団連としても長期的な視点に立つことは当然である。他方、デジタル化や国際情勢をはじめ昨今の急激な環境変化を踏まえれば、迅速なアクションも求められ、すぐにでも取り組まなくてはならない課題が山積している。長期と短期のバランスをとりながら、物事を考えることが肝要である。他方、政治の場合、選挙を意識せざるを得ず、ややもすると短期的な見方に陥ってしまうこともある。

スピード感が求められるのは、政治、行政だけではない。経済界の取り組みも今やっていることで十分かと問われれば、そうではない。相対的に以前より早くなったというのでは不十分である。従来の考え方、スピードで行動していては世の中のめまぐるしい変化に対応できない。

【対外経済戦略】

対米関係について、通商拡大法232条による追加関税は到底、理解できるものではない。7月19日に米国で開かれた公聴会でも、経団連として懸念を表明している。この公聴会で出された意見のほとんどが、日本からの自動車の輸入は米国の安全保障を阻害する恐れはなく、米国にとっても利益にならないという論調であったと承知している。今後、米国政府がどう施策を展開するかは不透明であるが、事前の予告通りに追加関税が措置されれば、日本経済へも深刻な影響が及ぶことになる。東京・ワシントンDC間といった中央政府同士の交渉だけに依存するのではなく、経団連としても、州政府や日米産業間での連携をこれまで以上に深めていく。

他方、対中関係では別の難しさがある。中国政府は自由貿易の推進を唱えているが、ビジネスの現場での対応はこの方針とは異なる場合がある。中国が進める一帯一路には幅広い案件が含まれている。中国側との対話を通じて理解を深め、積極的に取り組むものなどを見極めていくことが必要である。昨今の人民元安の背景には、米中貿易戦争への懸念の高まりがあると見ている。これを受けて、日本円がどう動くかを予想するのは難しい。ただ、為替変動への対応には時間がかかるものの、手を打つことは可能であり、柔軟に対応していくほかない。

不安定な国際情勢は経済界にとっても新たな試練である。経済が順調に推移している今だからこそ、経済界は全力をあげて対応していく。多面的に連携していかなければならないと実感しており、政治、行政にとどまらず、現状認識と問題意識を共有できる全ステークホルダーと一緒に取り組んでいく。不安定な国際情勢の中で安定的に対応していくためには、幅広い対話の拡充こそが重要である。

【地方分権】

現在の県、市といった行政区分は細か過ぎ、人口減少が進んでいけば、行政の効率化はさらに重たい課題となる。経済界は地方自治のあり方を根本的に変えなければならないと認識している。ただ、根本的に変えようとすれば、国政の選挙区の見直しなど政治の面で大変難しい問題に直面する。このため、まずは広域連携を進めていくことが、抵抗感なく取り組める現実的な対応となる。この典型が観光であり、インバウンドへの対応など観光を切り口にした連携はかなり進んでいる。また、老朽化したインフラの保守・更新が大きな課題となる中、既存の市町村の枠組みでは、コスト面で効率が悪く、自治体間での連携が必要である。このように広域連携にメリットがあることは明らかである。道州制という言葉に抵抗感がある中では、広域連携、地域連携を実質的に進めることが重要である。

【働き方改革】

働き方改革には多くの課題が内包されているが、労働時間規制の問題にやや焦点が当たり過ぎてしまった。ただ、本質的な問題は、働き方のスタイルが変わりつつある中、多様な働き方を導入しなければ産業構造に合わなくなっていくということである。今の働き方のルールは、労使間で取り決めた時間単位の働き方・給与がベースになっているが、時間に縛られない働き方も増えている。こうした従来にはなかった働き方が多くを占めるようになっていく中、ルールの見直しがなければ、従業員のモチベーション向上につながらず、生産性向上のボトルネックとなりかねない。

国会で働き方改革関連法案が成立し、これから細則を検討していく中、改めて働き方の仕組み、ルール、制度について、議論していく必要がある。テレワークの議論はこの一環であり、通勤時間がもったいない、介護・育児の問題に直面しているといった中で、従業員がモチベーションをもって職務に当たるためには、テレワークの導入がひとつの解決策となる。

【経団連におけるダイバーシティ】

経団連幹部のダイバーシティは、経団連のあり方を議論する中で考えるべきことである。企業とは組織のあり方が異なり、いきなり女性を増やせば良いということではない。経団連の目的、機能を確認しながらダイバーシティを進めていく。

以上

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