一般社団法人 日本経済団体連合会
【春季労使交渉】
今年の春季労使交渉は日本経済にとって非常に重要である。前回の消費増税の際、駆け込み需要とその反動減による需給ギャップが生じた。来年秋の消費税引き上げにあたっては、そうした事態で前回の引き上げ時のように、経済に変動をきたすことがあってはならない。そうならないよう、日本経済の地力を高めていく必要がある。
今年の春季労使交渉の背景として、消費を喚起するような賃上げが社会から期待されていることがある。3%の賃上げといった社会的な要請もあり、会員企業にはこうした点も意識しながら、自社の収益に見合った賃上げについて、前向きな検討をお願いしたい。
東海地域は経済が好調であり、高い収益を上げている企業が多い。史上最高益を記録する会社もある。現在、労使交渉の真最中であり、3月14日の集中回答日には、自動車、電機、金属などの主要業界で回答が示される。とりわけ自動車業界は、労使交渉における相場を左右している。好調な企業業績を背景に、経労委報告で示した方向性を踏まえ、各社が前向きな検討の末、回答を出すことを期待したい。
経済界は過去4年間、ベアを含めた賃上げ(2%台、月額7000円台)を実施してきた。一番大事なことは、この賃上げのモメンタムを継続していくことである。その結果として、過去4年間を上回る賃上げとなることを期待したい。
【働き方改革関連法案】
厚労省の調査データにおいて、比較するベースが異なるなど問題があったことが判明した。安倍総理は「裁量労働制で働く労働者の方が一般労働者より労働時間が短いデータもある」との答弁を撤回した。こうしたことはあってはならない。ただ、調査を巡るミスと法改正の趣旨は別問題であり、混同してはならない。働き方改革関連法案は、時代の要請に応じて、働く人の能力がより発揮されるよう環境を整備することを目指している。長時間労働の是正を図るものであると同時に、裁量労働制の拡充や高度プロフェッショナル制度の創設といった働き方の多様化に対応するものである。基本的な部分をしっかり議論してほしい。
経済界としては、制度の趣旨についての理解が広く社会の中で深まることが重要であると考えている。十分な審議が尽くされ、今国会において働き方改革関連法案が成立することを期待している。この観点から、裁量労働制が長時間労働を誘発しかねないとの懸念を払拭することが必要である。働き方の多様性を図ることは、社会、経済界、働く人の要請であり、極めて重要な課題である。
裁量労働制の対象拡大等に係る施行日をずらすといった報道があるが、政府として施行日延期を決定したわけではないと理解しており、当初の計画通り施行されることを期待している。
【日本の自動車市場】
トランプ大統領が大統領経済報告の中で、日本の自動車市場は閉鎖的であると指摘しているが、日本の輸入関税、輸入環境の実態はそうではない。関税率を見ると、例えば米国は、乗用車に2.5%、トラックに25%の関税を課しており、乗用車、トラックともに関税率がゼロなのは、主要国中、日本だけである。このように、関税の面で障壁はまったくなく、日本の市場は最も開放されている。実際、日本の自動車市場において、輸入車は増えている。日本政府には、こうした点について米国政府の理解が深まるよう、さらに努力を重ねてほしい。経済界としても、米国に日本の実態を理解してもらえるよう、一層取り組みを強化していく。
【プレミアムフライデー】
開始からちょうど1年となるプレミアムフライデーについて、進んだ点とそうでない点があると理解している。首都圏を中心に浸透し、知名度も高まっていると思う。消費喚起の観点からは、プレミアムフライデーに合わせて様々なイベントを開催した地域では、効果が上がる一方で、まだ十分に進んでいない地域もある。
制度の趣旨については理解が進んでいると思うので、粘り強く続けていくことが大事である。課題は、全国規模に広げていくことと、月末金曜日という開催のタイミングについての検証である。政府は月末金曜日の開催を継続していくということであるが、検証は必要だと思う。
【大阪万博誘致】
昨年4月、各国から正式に万博誘致に向けた立候補の届出が行われた。今年11月のBIE総会において開催地が決まる。まずは誘致に向けた活動に全力を傾けていく。オールジャパンの体制、即ち、政府、経済界、地元自治体、国民が一体となって残り8カ月、誘致に集中して取り組んでいく。大阪での開催が決まれば、次のステップに進む。「愛・地球博」の開催時のノウハウも継承されており、2025年に向けて、全国レベルでの協力のあり方も含め、開催に向けた様々な準備を行っていくことになる。