一般社団法人 日本経済団体連合会
【2016年の振り返り】
経済界にとって、2016年はアベノミクスの下、デフレ脱却・経済再生に取り組み、その実現に向けた兆しが出てきた一年であった。同時に、社会保障制度改革、財政再建、働き方改革などの重要政策課題についても、さらに強力に取り組まなければならないことが明確になった一年であった。また、国際社会では激動が見られた。保護主義、ポピュリズム、反グローバリズムが台頭するなか、こうした流れを断ち切らなければならないという思いを強くした。
年初、2016年は政策が実行に移され、目標が実現され、日本の実力がいかんなく発揮されるという思いを「実」という漢字一字に込めた。今年一年を振り返って、様々な課題が実現に向けて動き出していることは間違いない。経団連としても、Policy & Actionを掲げ、政策を提言するだけでなく、政府、関係方面に実行に向けて働きかけることができた。外部要因もあり、すべてが実現されるまでには至っていないが、課題の実現に向けて動き出した一年であったと総括できる。
【春季労使交渉】
本日、カジノシークレット キャッシュバック 上限において、来年1月の2017年版カジノシークレット キャッシュバック 上限報告の公表に向けた最終確認を行った。現在のような経済状況にあって、経団連が来年の春季労使交渉で示すべき指針の内容となっている。取りまとめに当たっては、先日の働き方改革実現会議での安倍総理からの要請や経済の好循環の実現に向けた社会的要請も踏まえながら、賃金引上げのモメンタムをいかに継続していくかというのが大きなテーマであった。そうした中、今年と同様、年収ベースでの賃金引上げを呼びかけていくという基本方針について合意を得ることができた。
年収ベースの賃金引上げの具体的な中身については、各社が定期昇給、ベア、賞与、諸手当など多様な選択肢の中から自社の実情に適した方法を見出していくことになる。ベアについては、年収ベースでの賃金引上げを実現するための選択肢の一つとなる。
安倍総理からは、少なくとも前年水準並みの賃金引上げ、4年連続のベアの実施、期待物価上昇率を勘案した議論、中小企業との取引条件の改善といった要請があった。それぞれについて、経労委報告の中で、経営側の考え方を示すことになる。期待物価上昇率については、そもそも春季労使交渉において、物価水準は交渉の大きな決定要因ではない。また、これを勘案する場合も期待値ではなく実績値をベースに議論がなされるのが大勢であるが、期待物価上昇率を議論のひとつの要素とすることは考えられるだろう。
【来年度予算編成】
社会保障関係費の伸びを5000億円程度に抑制することができたのは大きな進歩である。また、今後精査する必要はあるが、構造改革に資する施策への重点配分を行うとともに、財政規律を維持するため新規国債発行額の減額の方向性も堅持できる方向と認識している。次期通常国会で予算案を早期に成立させ、政策を実行に移していくことが重要である。
社会保障改革については、さらなる切り込みが必要である。経済財政諮問会議において社会保障関係費の適正化に向けてさらなる取り組みを進めていく。
【金融政策】
デフレ脱却と経済再生に向けて、官民があらゆる政策手段を総動員する中、日本銀行は2%の物価安定目標を達成するまで金融緩和を続けていくとしており、これは評価されるべきである。ただし、物価目標達成の成果が出るまでにはまだ時間が必要である。日銀は今秋に量的・質的緩和の総括検証を行い、物価目標未達の要因として、新興国経済の失速、原油価格の下落、消費増税後の国内消費の低迷をあげていたが、いずれも理解できるものである。
現在、国内外の経済情勢が変化しつつある。中国経済は少しずつ改善し、OPECの協調減産合意により原油価格は上昇し、国内消費も上向きつつある。時間はかかるだろうが、消費者物価も徐々に上向いてくるのではないかと期待している。
【働き方改革】
経団連の同一労働同一賃金に関する基本的なスタンスは、同一企業内で同種の仕事をし、不合理な賃金差がある場合はそれを是正するべきというものであり、この方向性は政府とも共有している。繰り返し述べているように、日本企業が長らく築いてきた雇用慣行や賃金決定の仕組みに十分配慮したガイドラインが示されるよう期待している。
同一労働同一賃金の実現により、人件費が増え、企業の負担が増すとの指摘があるが、制度を導入したからすぐに負担が増えるということはない。ただし、企業の中に不合理な格差を是正していく中で、人件費の上昇圧力につながるという懸念はあり、慎重に対応していく必要がある。また、長時間労働の是正を進めていく中で、残業手当が減額していくことも考えられる。人件費全体で考えることも必要である。
【内閣支持率】
内閣支持率はその時々のトピックにより上下するが、7月の参院選で示されたように、安倍内閣への支持は高い。実際、支持率は50%超の高い水準で推移している。今回の日露首脳会談は期待値が高かっただけに、一部の国民には若干の失望感があったかもしれないが、非常に困難な課題を一歩前進させるための首脳会談であったと評価すべきである。
【日露関係】
プーチン大統領の訪日を機に、安倍総理が提案した8項目の「協力プラン」に沿って、民間では68件の共同プロジェクトが合意された。経団連の役割はこうした協力案件を進めるための環境整備である。ロシアではまだ十分にビジネス環境の整備が進んでいない。法整備が不十分であったり、許認可が複雑で時間がかかるなど課題は多い。また、道路、港湾、鉄道などの基幹インフラや都市機能の整備も不十分である。経団連としては、こうしたビジネス環境の整備を働きかけることで、各プロジェクトを後押ししていく。
ビジネスの立場に立てば、プロジェクトは採算に合うことが大前提となる。日露間の信頼関係が醸成され、平和条約の締結につながることを期待したい。