カ ジ ノ シ ー ク レ ッ トは10月17日、提言カ ジ ノ シ ー ク レ ッ ト~わが国のAI-Powered化に向けて」を公表した。同提言では、わが国におけるAI開発・活用のあり方について、2019年に公表した「AI活用戦略~AI-Readyな社会の実現に向けて」をアップデートしつつ、「広島AIプロセス」をはじめ、現下の情勢に鑑み求められる施策を整理した。概要は次のとおり。
■ 基本的考え方
Society 5.0 for SDGsの実現に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるうえでは、AIの積極的活用が不可欠である。その際、「人間中心のAI」という目的を明確にしながら、活用に付随するリスクに向き合う必要がある。同時に、それらの前提として、産業競争力の向上、健全な競争環境の確保等の観点から、わが国のAI開発能力の強化が欠かせない。以上を踏まえ、19年に提言した「AI-Ready」の段階を超えて、あらゆる分野でAIのメリットを享受できる「AI-Powered」な社会の実現が求められる。
■ AIの積極的活用に向けた取り組み
AIの積極的活用に向けて、AIのみならず、DX全体を見据えた包括的な政府戦略を策定する必要がある。その際、関係府省庁による短期的かつ既存の取り組みをボトムアップでまとめた形式的な戦略ではなく、一元的司令塔のもと、必要な施策をトップダウンで整理した大局的な戦略とすることが求められる。
また、各主体がAIの活用を進めるうえでは、費用対効果を実感できなければ、取り組みが進まない。各産業ドメインで蓄積されてきた知見をAIと組み合わせながら、社会全体の刷新につなげる必要がある。同時に、成長産業・分野等への円滑な労働移動等についても検討が求められる。
■ AI活用に付随するリスクへの対応
AIのガバナンスについて検討する際には、「人間中心のAI」という原則を踏まえ、人や社会のあり方に影響するAIの利用を規律する一方で、その他の場面で過度な規律を課すべきではない。また、AIの開発事業者やAIサービス提供事業者、その利用者など、それぞれの責任を明らかにしながら、国際的整合性を担保しつつ、エコシステム全体でガバナンス向上に取り組むことが求められる。
とりわけ知的財産に関しては、権利保護はもとより、AI活用を阻害する要因を排除すべく、法律の明確化・事例の充実などを通じて予見可能性を高める必要がある。また、コンテンツ産業を含むデータ提供者、AI開発事業者、AIサービス提供事業者、利用者それぞれが利益を適切に享受できる環境を整備し、わが国の競争力の維持・向上につなげるべきである。
このほか、AIの活用が人々の思考能力の低下や感性の衰え等につながるのではないか、との懸念が指摘されている。「AIに頼らない」のではなく、情報の正誤・真贋を自ら判断し「AIを正しく用いる」ことの本質に関する議論や、それを理解し実行するための教育・人材育成のあり方を検討する必要がある。
■ わが国におけるAI開発能力の強化
わが国におけるAI開発能力の強化に向け、前提となる環境を整備する必要がある。スーパーコンピューター等の計算資源の整備、研究開発支援、人材育成等が求められている。また、AIの開発に不可欠なデータを整備し、日本語特有の表現等を可能とすることも欠かせない。
また、わが国の強みを活かして開発を進めるべく、現在普及している生成AIの開発はもとより、AI全般にかかる基礎研究の推進や周辺技術の開発に対して、バランスよくリソースを投じる必要がある。とりわけ画像・動画等を生成するAIの開発においては、国際的なルール形成とも連動しつつ、わが国のコンテンツ力を活かすことが求められる。
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AIに関する技術は日進月歩であり、環境の変化を踏まえながら、継続的にカ ジ ノ シ ー ク レ ッ トとしての考え方を発信していく。
【産業技術本部】