経団連は2月18日、労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)をオンラインで開催した。日本繊維産業連盟副会長・日本化学繊維協会専任副会長の富吉賢一氏、富士通サステナビリティ推進本部エキスパートの成岡剛氏から、それぞれの産業におけるアジア地域を中心としたサプライチェーンの現状について、また、ILO駐日事務所プログラムオフィサー渉外・労働基準専門官の田中竜介氏から、ILOの「アジアにおける責任あるバリューチェーン構築プロジェクト」の概要について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ アジアにおける繊維業界の概況(富吉氏)
繊維産業は海外、特にアジアでの生産が大半を占めており、近年は中国から東南アジアにサプライチェーンが広がっている。
日本繊維産業連盟は2030年のあるべき繊維業界のビジョンを策定し、「サステナビリティへの対応」を最重要課題と位置付けている。これまでは、下請け構造がもたらす深刻な問題に対し、取引適正化を促すため、業界としてのガイドラインと自主行動計画の策定に取り組んできたが、昨今は環境・人権問題も含めて対応している。特にアジアで拡大しているサプライチェーンにおける人権問題への対策に注力しており、人権デュー・ディリジェンス(人権DD)のガイドラインも作成中である。
■ サプライチェーンにおけるCSR(成岡氏)
電子情報技術産業協会(JEITA)は、CSR調達に関する業界標準である「責任ある企業行動ガイドライン」を20年3月に策定した。アジアを中心としたサプライチェーン全体での企業の責任ある行動が理解できる内容としている。
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を端緒として、苦情処理メカニズムが着目されるようになり、自主的に取り組む企業が増えている。JEITAは、個社での対応が難しい課題、サプライチェーン全体に大きな影響を及ぼす問題を解決するため、「ビジネスと人権対話救済機構」(仮称、JCER)を22年度中に立ち上げ、業界共同の苦情処理プラットフォームの構築を進める。
■ ILOアジアにおける責任あるバリューチェーン構築プロジェクト(田中氏)
G7貿易大臣会合(21年10月)の声明において、全世界での強制労働の撲滅に向けた課題に取り組むことが示されるなど、ビジネスと人権への国際的な関心の高まりを踏まえ、経済産業省の21年度補正予算の拠出を得て同プロジェクトを立ち上げた。企業と政労使の力を最大限に引き出してディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現し、責任ある企業行動を可能にする環境の構築を目的としている。具体的には、人権DDと監査の仕組みに関する好事例を収集する。繊維産業、電子機器産業を含む部品製造産業を対象とし、実施国は、バングラデシュ、カンボジア、日本、ベトナムで、22年4月からを予定している。
【労働法制本部】