本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。
37.ネブラスカ州
1854年のカンザス・ネブラスカ法に基づき設立されたネブラスカ準州を前身とする。67年に州に昇格した。
グレートプレーンズに位置し、農業が盛んな州である。肉牛の生産量で全米2位につけるほか、小麦、大豆の生産量が多い。食品加工業も強い。日本企業は、食品や輸送機械関連を中心に約50社が進出し、5000人の雇用を創出している。
最大都市オマハには、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が会長・CEOを務める投資会社バークシャー・ハサウェイの本社が所在する。バフェット氏本人もかねて同市に居住するため「オマハの賢人」と呼ばれることがある。
政治面では、同州第3区選出のエイドリアン・スミス連邦下院議員(共和党)が米日議員連盟の共同議長を務める。同氏は、中間選挙で共和党が多数派となった場合、通商や税制を管轄する下院歳入委員長の有力候補になるとみられている。また、メイン州と並び、大統領選において選挙人を選挙区ごとに選出する(州単位で勝者総取りとしない)珍しい州として知られる。州全体では強固な共和党支持だが、2008年、20年の大統領選では、オマハを中心とする選挙区で民主党候補が選挙人を獲得している。州政においては、全米で唯一、一院制の州議会を有する。
38.コロラド州
ロッキー山脈東麓でゴールドラッシュが起こったことを背景に、1861年、近隣に編成されていた4つの準州(ネブラスカ、カンザス、ユタ、ニューメキシコ)から土地を切り出し、前身となるコロラド準州が設立された。州昇格が合衆国独立100周年にあたる76年であったことから、「Centennial State(100周年の州)」の愛称を持つ。
州の東部には標高1000メートル超の高原が広がり、西部にはロッキー山脈に属する4200メートル級の山々が連なる。州の平均標高は約2100メートルであり、50州で最も高い。
州人口は約580万人である。過半数の320万人が、ゴールドラッシュの時代に興った州都デンバーを中心とする都市圏に集中している。
サンタクロースの追跡でおなじみのNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)等が所在するピーターソン宇宙軍基地や空軍士官学校をはじめ、州内に複数の軍拠点が存在する。これを背景に、通信、航空宇宙産業の技術・人材が蓄積している。また、シリコンバレー等から移住・移転も受け入れており、ハイテク産業、研究開発も盛んである。その中核となるデンバーやコロラドスプリングスはシリコンマウンテンとも呼ばれる。日本からも医療機器やアパレルを含め、幅広い業種から80社以上が進出している。
政治面では長らく接戦州の一つだったが、直近4回の大統領選で民主党候補が連勝するなど、民主党寄りに変化してきたとみられている。その要因として、リベラル志向が強い若年層等の増加があるとされる。
39.モンタナ州
州の大部分はルイジアナ買収によって獲得された領土である。64年にモンタナ準州として編成され、89年に41番目の州となった。
州の面積は約38万平方キロメートルで、日本とほぼ同じ広さである。全米ではアラスカ州、テキサス州、カリフォルニア州に次ぐ第4位にある。一方、人口は約110万人で、山形県や宮崎県と同程度である。州人口は近年増加しており、2021年の議員定数見直しで、30年ぶりに州に二つの下院選挙区を設けることとなった。
農業が盛んな州であり、肉牛や小麦を多く生産する。また、大麦の生産では全米2位のシェアを誇る。食品加工や穀物関係で日系企業も進出している。
観光業も州経済の重要な柱である。特にカナダ国境をまたいで広がるグレイシャー国立公園や、ワイオミング州を中心に広がるイエローストーン国立公園は、いずれも著名な観光スポットとなっている。
政治面では、農村部を中心とする保守的な共和党支持層が強く、1952年以来、大統領選で民主党候補が勝利したのは2回だけ(64年のジョンソン氏、92年のクリントン氏)である。一方で都市部を中心とする民主党支持層にも存在感があり、連邦上院議員選や知事選を民主党が制することも珍しくない。
【米国事務所】