経団連は2月10日、Policy(提言・報告書) を内閣府へ提出した。同計画は、2021年度から25年度の5年間にわたるわが国の科学技術イノベーション政策の基本的な方向性を定めるものである。1月19日の統合イノベーション戦略推進会議において答申素案が了承され、翌20日に意見募集を開始したことから、イノベーション委員会企画部会(江村克己部会長)において対応を検討し、同意見を取りまとめた。
同意見では、わが国が目指すべき社会として第5期計画で掲げられたSociety 5.0が、第6期計画でも引き続き中心的なコンセプトとして掲げられたことを高く評価するとともに、SDGs(持続可能な開発目標)とも軌を一にしているとの認識も適切とした。そのうえで、検討段階で存在していた「インクルーシブ」「誰一人取り残されることのない」といったSDGsを構成する重要キーワードについても記述を残すことを求めた。
さらに、わが国を取り巻く地政学的な状況を強く意識した記述や「総合知」といった新たな視点を取り入れたことを評価する一方、現代が「人新世(アントロポセン)」時代とも称されるただなかにあることを踏まえ、科学技術イノベーションによって人類の未来を築いていく必要性を、最上位概念として位置づけるべきであると主張した。
その実現に向けては、イノベーションの基盤である科学技術の力が不可欠であり、「科学技術立国」の再興が急務であることも強調した。
個別の論点に対する意見は次のとおり。
- 司令塔機能のさらなる強化を期待。産業界としてシンクタンク機能のあり方について引き続き意見を発信していく。
- 「次期SIP」を実施するにあたっては、民間からも納得性のある、予見可能な制度とすることが肝要。
- 基本計画における政府研究開発投資の予算規模について、今回「5年間で約30兆円」と記されたことは、規模として適切であり、わかりやすい目標であると評価。政府投資による民間投資誘発促進に関し、さらなる記述が望まれる。
- 「10兆円規模の大学ファンド」が大学改革を促進し、ひいてはわが国のイノベーション・エコシステムの強化につながることを強く期待。
- CSTIには、自らがSTEAM教育の旗振り役となり、関係省庁を束ねるとともに民間とも連携して、国民を広く巻き込む機運を醸成していくことを期待。
- 研究インテグリティ(注)の取りまとめにあたっては、大学関係者のみならず民間企業からも十分な意見聴取を行うことが肝要。
- 分野別戦略の重点分野について不断の検証を行い、検証の結果を単年度ごとの統合イノベーション戦略でアップデートしていくことが必要。
- 研究開発の初期段階からの社会受容性の醸成についても明記が必要。
(注)研究インテグリティ=研究者が有すべき研究の健全性・公正性
【産業技術本部】