経団連の雇用政策委員会(岡本毅委員長、進藤清貴委員長)は9月10日、都内で政策部会、人事・労務部会、国際労働部会との合同会合を開催し、中央大学大学院戦略経営研究科の佐藤博樹教授からaカジノシークレットをテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。
■ 働き方改革の進め方
多くの企業では、長時間労働是正のためのさまざまな施策が進められている。例えば20時以降の残業を禁止する取り組みがあるが、働き方自体は変わらない。目指すべきは、安易な残業依存体質を解消して時間意識の高い働き方を実現することである。その結果として残業時間が削減されることが望ましい。
現在、管理職の多くは、時間をかけた働き方を評価された人たちである。しかし、こうした職場風土は解消しなければならない。社員は会社や上司が評価すると考える働き方を行う傾向にあるので、部下の働き方の評価基準を見直すべきである。
時間意識を高めるマネジメントを実現するためには、メリハリのある働き方へ転換していかなければならない。効果的な施策として、例えば「週2日定時退社」の取り組みがある。この制度は各人が金曜日に翌週の定時退社日(2日)を自由に決定するものである。残業削減を目的とするものではなく、全員が一斉に定時退社する必要もない。残業は、定時退社日以外で対応し、1人でできる仕事に限定することが前提となる。
この取り組みを2カ月ほど続けると残業が減っていく。所定労働時間内・外の仕事の割り振りを意識し、1週間の仕事の段取りを早めに検討するようになるからである。また、毎日誰かが定時に帰るため、自分が定時に帰ることに遠慮がなくなる。大事なことは、社員に働き方を変えて、時間の使い方を考えてもらうことである。
■ 社員に求められる変化対応行動
企業環境は持続的に変化するが、その変化を正確に予測することは難しい。不確実性の時代に企業が人材活用面で適応するためには、例えば有期契約社員等の活用による「数量的柔軟性」(労働サービス需要の量的変化への対応)や幅広い職業能力や高い学習習慣を備えた社員による「機能的柔軟性」(労働サービス需要の質的変化への対応)などを高めていく必要がある。
「機能的柔軟性」は長期継続雇用の人材が中心となって担うものであり、かつては日本企業の強みであった。しかし、多様な社員の増加によって「機能的柔軟性」が損なわれ、数年先の質的変化への対応力が下がっている。
こうしたなか社員には、(1)知的好奇心 (2)学習習慣 (3)チャレンジ力――の3つの特性を備えた行動、すなわち変化対応行動が求められている。変化対応行動を高めるには、ダイバーシティ経営のもとで社内外の多様な価値観を持つ人々との交流やさまざまな仕事を経験することが有効である。
変化対応行動ができていても生活の自己管理ができない人材は、時間をかけた働き方を続けてしまう可能性が高い。企業としては、働き方改革の取り組みだけでなく、仕事以外の生活を大事にする生活改革を同時に進めなければ変化対応行動は促進されないことを認識すべきである。
■ 働き方改革と生活改革の好循環
社員の生活改革を同時に進めるために企業ができることは、考えるきっかけをつくることしかない。その1つとして「週2日定時退社」を実現し、平日のゆとりを創出するメリハリワークを推進してもらいたい。その際、会社が望ましいと考える社員像を示すことが鍵となる。時間意識の高い働き方だけでなく、仕事以外の生活を大事にする社員が当たり前の社員像にしていかなければ、働き方改革は定着しない。
【労働政策本部】