米国の貿易赤字削減を第一の目標に掲げるドナルド・トランプ大統領の通商政策については、中国との貿易戦争の行方を注視する必要がある。他方、安全保障面では、米朝首脳会談を踏まえた北朝鮮情勢、イラン核開発をめぐる6カ国協議からの離脱やイラン制裁の行方などが注目される。
そこで、カジノ シークレット 無料 ボーナスは5月18日、東京・大手町のカジノ シークレット 無料 ボーナス会館で経済外交委員会(片野坂真哉委員長、大林剛郎委員長)を開催し、世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社であるユーラシア・グループのキム・ウォーレス・マネージング・ディレクターから、米国の対外政策について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 米通商政策概観
自国第一主義を掲げるトランプ政権のもと、米国の対外政策は一夜にして大きく様変わりした。通商政策を主導するロバート・ライトハイザー米通商代表やピーター・ナヴァロ大統領補佐官らは、政策やビジネスの経験に乏しく、一定の習熟期間が必要であろう。
米国の通商政策は今後、概ね3つの段階を経ると考えられる。第一に、通商拡大法232条(注1)や通商法301条(注2)の発動に起因する各国・地域の報復関税の応酬である。
このエスカレーションは今年中にある程度落ち着くと思うが、並行して第二段階では、半導体など安全保障上重要とみなされる技術をめぐって、特に中国企業に対する対米外国投資委員会(CFIUS)の審査が本格化していくことになろう。
さらに次の第三段階では、2020年の大統領再選も意識しつつ、例えば中国の通信機器大手・中興通訊(ZTE)への制裁等に関する交渉や調整が行われるであろう。
複雑なグローバル・サプライチェーンが張り巡らされるなど、世界は大きく変化しているにもかかわらず、人々の思考様式は1980年代で止まったかのようである。
■ 日米関係の現状と展望
安倍晋三首相とトランプ大統領の関係は引き続き強固であるが、鉄鋼・アルミへの追加関税と北朝鮮問題への対応との兼ね合いが、より大きな制約となるかもしれない。
対中対話という文脈において、経済的・地政学的観点からTPPが有する長期的な便益を踏まえれば、米国の離脱は極めて残念であるが、復帰の可能性は限りなく低い。
■ 北朝鮮問題への対応
史上初の米朝首脳会談(6月12日、シンガポール)は成立するだろうが、金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ大統領が互恵的な合意を結べる可能性はほぼゼロである。非核化の道筋やスケジュール感について双方の隔たりが大きいこともあり、トランプ大統領の現任期中に非核化が実現する確率は5%程度であろう。
■ イラン核合意の展望
世界中が今や「米制裁疲れ」の様相を呈している。制裁が効力を発揮するのは、あくまで(1)多国間枠組みであり、かつ(2)他に代替策がないときに限られる。トランプ大統領はイラン核合意(注3)から離脱を表明し、イランに圧力をかけているが、欧州の同盟国との新たな亀裂が広がるばかりか、地域における挑発の連鎖が石油価格上昇など地政学的リスクを高めかねない。
(注1)国家安全保障を阻害するおそれのある輸入に関して、商務長官の調査結果を受けて、輸入制限措置(関税引き上げ、輸入割当等)を発動できる権限を大統領に付与するもの
(注2)外国の不公正な貿易慣行に対し、大統領の判断で関税引き上げ等、一方的な制裁措置を可能とする条項
(注3)2015年に米英仏独露中の6カ国とイランが結んだ合意。イランが核開発を大幅に制限する見返りに米欧が経済制裁を緩和する内容
【国際経済本部】