昨年11月6~18日にドイツのボンで開催されたCOP23(国連気候変動枠組条約第23回締約国会議)に参加し、パリ協定実施に向けた詳細ルールの策定交渉の状況を確認するとともに、各国政府・産業界関係者らと意見交換を行った。それを踏まえ、COP23と今年の地球温暖化対策の動向等を3回にわたり解説している。今号では、カジノシークレット キャッシュバック率交渉関与姿勢等について解説したい。
■ 米国の交渉関与姿勢
今回のCOP23で注目されたのは、昨年6月にパリ協定離脱を表明した米国がどのような体制で交渉に臨むのかということであった。
昨年8月に米国国務省は、(1)米国は国連に対し、パリ協定の規定に基づき離脱可能となった時点でパリ協定を離脱する旨の意向を通知した。トランプ大統領は米国および米国のビジネス、労働者、国民、納税者にとって好都合な条件が確保されるならば、パリ協定に再び関与(re-engage)する用意がある(2)米国は経済成長、エネルギーセキュリティーを推進しつつ、排出削減をするバランスの取れたアプローチを支持する。米国はイノベーション、技術ブレークスルーを通じて温室効果ガスの排出量削減を続けるとともに、多くの国のNDC(国別削減目標)においてエネルギーアクセス、セキュリティーが重視されていることを踏まえ、クリーンかつ効率的な化石燃料の利用、再生可能エネルギーその他のクリーンエネルギーの活用に関し、他国を支援する(3)米国は国益を守り、将来の政策オプションを残しておくため、COP23を含め国際的な気候変動交渉に参加を続ける。パリ協定実施の詳細ルールに関する交渉にも参加する――との声明を出し、詳細ルール交渉に引き続き関与することを明らかにした。経済成長、エネルギー安全保障と温暖化防止のバランス、イノベーションの重視等、パリ協定離脱を除けば米国のポジションは日本の産業界と非常に近い。いろいろな面での日米連携の可能性を模索すべきであろう。
COP23での米国代表団の規模はオバマ政権に比して3分の1程度に縮小したが、先進国と途上国という二分論の導入阻止など米国にとって重要なイシューについてはきちんと発言をしていた。米国が交渉に背を向けていないことはよいニュースだが、影響力の低下は否めない。途上国が主張するような二分論が導入されれば、米国の離脱が現実のものになるばかりか、将来の復帰も難しくなる。日本を含むアンブレラグループ(EU以外の先進国グループ)がそれを補うことが重要だ。
■ 2つの米国
COP23では、トランプ大統領の離脱方針に反発して「We are still in the Paris Agreement」に名を連ねた地方政府、企業などが独自のパビリオン「US Climate Action Center」を設置した。サイドイベントにはブラウン・カリフォルニア州知事やブルームバーグ元ニューヨーク市長らが次々に登壇して盛んな喝采を浴び、あたかも「2つのアメリカ」の様相を呈していた。なお、ブラウン州知事らがトランプ大統領の離脱表明の日に結成した US Climate Alliance に現在参加している15の州とプエルトリコ自治連邦区は、米国総人口の40%、GDPの40%を占めるが、CO2排出量は20%程度であり、1州を除き、大統領選ではクリントン候補が勝利した州である。
■ 石炭バッシング
COP23で注目を集めたのは、激しさを増す石炭バッシングである。温暖化防止における化石燃料のクリーン利用と原子力の役割という米国政府のサイドイベントは環境NGOに妨害された。米国とエネルギー戦略協力を進めることに合意し、途上国にクリーンコール技術を移転している日本も地球温暖化対策に消極的な国に与えられる「化石賞」を受けた。COP23終盤には英国とカナダの主導により27カ国・地域の参加する脱石炭火力連合が発足し、大きく報道された(これら諸国の石炭火力設備容量の対世界比率は2~3%にすぎない)。アジア地域のエネルギー需給の実情を考えれば、石炭が一定の役割を果たすことは明らかなのだが、3つのE(経済、エネルギー、環境)ではなく、1つのE(環境)が至高とされるCOPの世界では、石炭は許されざる存在になってしまう。
詳細ルール交渉は重要ではあるが地味であり、上記のような交渉外のイベントやイニシアティブが注目を集めており、COPの見本市化、美人コンテスト化が進んでいるように思われる。
次号では、日本へのインプリケーションについて考えてみたい。
【21世紀政策研究所】