いまワシントンDCでは、ユニオン・ステーションをはじめ町中の建物で半旗が掲げられている。10月1日にラスベガスで突如58人の命を奪った銃乱射事件は、銃規制論者と憲法修正第2条に基づき武器の保持・携帯の自由を主張する規制反対派との議論を再発させている。
「米国では、42%の住民が銃のある家に住んでいる」――。米国を代表する世論調査機関のピュー・リサーチ・センターは、今年6月に「米国と銃との複雑な関係」と題する調査レポートを発表し、こう指摘している。さらに、銃保持者のうち、1丁のみの保有は32%で、2~4丁が37%、5丁以上の保有が29%に上っている。
銃保有者の3分の2以上が、その権利を言論、投票、プライバシー保護、信教の権利に次ぐ重要なものと認識している。保持の主目的は自衛が67%で、狩猟38%、スポーツ射撃30%、コレクション13%、業務8%と比べて圧倒的に高い(保有者の44%が複数の理由を挙げている)。銃撃事件の主たる原因を銃の違法入手の容易さとする人は、銃を持たない人の87%に対して銃保有者でも83%と高いが、銃の合法的入手が容易過ぎることとする人は、銃を持たない人の67%に対し銃保有者では44%にとどまる。違法入手こそが問題ということであろう。他方、高校までの学校の教職員に銃保有を認めるべきとの意見を、銃保有者の66%、非保有者の35%が支持している。
そもそも銃乱射事件を銃規制論議に結びつけるべきか、銃規制と銃規制反対のどちらのスタンスを取るかはともかく、まずは実態を知ることが重要と感じる。
同センターはまた、8月23日に米、中、露3国の好感度レポートも発表している。調査対象は世界36カ国で、平均値では米国が以前の64%から50%、中国は52%から48%に下げ、ロシアは28%から35%に上げている。国別では、米国の好感度が中国を6%ポイント以上上回っているのが、日本、韓国、ベトナム、フィリピン、インド、イタリア、南アフリカなど12カ国で、オランダ、スペイン、ギリシャ、オーストラリア、インドネシアなど15カ国では逆の結果が出た。ベトナムでは、米国が84%を獲得したのに対し、中国は10%しか取れていないが、この背景に、ベトナムが中国との問題について米国の支持を得てきたことが指摘されている。
ピュー・リサーチ・センターは、1990年にタイムズ・ミラー社が世論調査部門を置いたことに始まり、2004年にワシントンで設立された。同センターの報告書は100ページ以上に上る場合も多く、ここに挙げた数字は全体の一部にすぎない。さまざまな切り口から質問を投げかけ、答えを整理し、余計な分析はあえてしない。それはあたかも健康診断のMRIを彷彿させ、国民意識や世相、時代の潮流などを、身体の状態を明らかにするように映し出す。
ソーシャル・ネットワーク・システムを通じて発信される意見には、断片的な知識に基づく独善的なものが多いことも指摘されるなか、同センターのような機関が地道な世論調査を行い、その結果を世に示すことがますます重要になっている。
(米国事務所長 山越厚志)