北朝鮮が本セミナー開催を絶妙のタイミングにした――。
9月5日、CSIS(戦略国際問題研究所)で開催された「2017年韓米戦略フォーラム~韓米同盟の現在と将来」のあいさつのなかで、主催者代表の李是衡韓国国際交流財団理事長は自嘲気味に述べた。同理事長によれば、昨年末の時点で、今年9月にはトランプ政権の陣容が固まっていると見込んで予定を組んだとのことだが、駐韓大使も決まっておらず当てが外れた。他方、北朝鮮の一連の動きが米韓関係への関心を高め、セミナー自体は大変な盛会となった。さらにトランプ大統領が、発効から5年となる米韓自由貿易協定(KORUS)の破棄も含めた見直しを示唆したことから、安全保障のみならず通商のリスクがセミナーへの関心を高めた。
冒頭、リチャード・アーミテージ元国務副長官が、「米国は100パーセント韓国をバックアップする」との力強い演説を行った。ステファニー・マーフィー下院議員(フロリダ州選出)も、北朝鮮の脅威に対して米国の韓国へのコミットメントは強まっていると述べ、加えてKORUSは両国経済に利益をもたらすのみならず同盟関係の礎となっていると述べた。
続いて、次期駐韓米国大使への指名報道も出たヴィクター・チャーCSIS上級顧問・韓国部長がモデレーターを務めるセッションでは、米韓両国の専門家が「同盟関係にとっての機会と挑戦」について議論した。また、マイケル・グリーンCSIS上級副理事長・アジア日本部長のセッションでも、両国専門家が、北東アジアにおける同盟関係の意義を話し合った。
朴泰鎬ソウル国立大学名誉教授がモデレーターを務めるセッションには、米側からウェンディ・カトラー・アジアソサエティ政策研究所副理事長兼ワシントン所長も参加し、米韓経済通商協力が話し合われた(写真)。そのなかでカトラー副理事長は、KORUS見直しの背景にはTPP、NAFTAなどの通商協定に対するトランプ大統領の猜疑心があり、NAFTA破棄が容易でないことからKORUS破棄が取り上げられている面があると指摘。そのうえで、KORUS破棄となれば、最悪のタイミングでの最悪の決定といえるとして、まずは、両国が赤字問題やKORUSの問題点などについて共同スタディーを行うことを提案した。
KORUS成立に至る韓国の働きかけは、ワシントン対応の成功例ともてはやされたこともあるが、その後の対応についてはさまざまな問題が指摘されてきた。日ごろから真の友人を増やしていくことの重要性をあらためて痛感する事態となっている。
(米国事務所長 山越厚志)