今年は日中国交正常化から40年の節目の年である。人間で40歳といえば不惑の年ではあるが、まだ惑うことの多い日中関係といえる。
3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で、温家宝総理は今年の経済成長率の目標を7.5%にすると表明した。これからは成長の質を求め、安定を重視していく姿勢と受け止められている。そして、今年の秋には中国に新しい指導者が誕生する。この大国の新しい指導者は、成長を続けていくために国際協調の基本路線は変えないだろう。しかし、開発とそれに伴う環境破壊の深刻化、数年内に減り始めるといわれる労働人口、ボーダーレス化した経済への対応など、労働集約型産業による加工貿易を通じて世界の工場といわれてきた中国も、これからの10年は、さまざまな次元で起こる、急速で複雑な構造変化に直面することになろう。
日中関係も、これからの10年に向けて、新しいパートナーシップを築いていく時期にきている。これまでの「友好」に力点を置いた関係から、さらに一歩踏み込んだ「互恵」関係へ結び付きを強めていかなければならない。政治では日中関係について、「戦略的互恵関係」という言葉がよく使われるが、これを具体的に進める取り組みが求められよう。政治面では面子がぶつかり合うことも多々ある。一方、民間は実利優先ではあるが、ざっくばらんに話せるという面がある。まずは民間の人的交流を一歩でも二歩でも進め、信頼関係を強固にすることが必要である。
これからの中国は、国家主導による重厚長大産業の成長から、民間の小売・運輸やサービス業などの成長へシフトしていくであろう。そうしたときに、まさに同じ道を歩んだ私たちが共に取り組めることは多い。新しい日中関係を築くうえで、経済界が担う役割は大きい。
中国には「水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない」という言葉がある。次世代の「互恵」関係に向け、まさに、私たちが新たな井戸を掘り、次なる日中関係を築いていくときである。